受賞・表彰

第42回 日本関節病学会 学術集会奨励賞 受賞報告


弘前大学大学院医学研究科 整形外科学講座 大学院3年生 千葉大輔

  第42回 日本関節病学会において40歳以下の若手研究者を対象に優れた研究内容を発表した者に授与される学術集会奨励賞を受賞しましたので、この場をお借りして報告させて頂きます。
 我々は日本人にも多くの方が患っている変形性膝関節症の病態解明に取り組んでいます。私は岩木健康増進プロジェクトの会場に大きな超音波測定器を持ち込んで毎年1,000名以上の住民の方の膝の内部を観察させて頂き、そこから得られた多くの情報を解析しております。変形性膝関節症の定義は『膝関節軟骨を主とした関節構成体の慢性変性疾患』です。何だか難しい響きですが、津軽弁で平たく言うと『膝っこの表面が削れて関節全体がアメてくる(変形してくる)』現象が起こります。その変化の1つに『骨棘の形成』という現象があります。これは関節のフチに生じる『余計な骨』つまり『バカ骨』です。この『バカ骨』が変形性膝関節症の痛みなどの症状悪化に結びつくと考えられており、軟骨組織の修復と共に『バカ骨』を作らないことが変形性膝関節症の治療に結びつく可能性があります。そのため骨棘の成因については様々な議論が行われています。


第42回 日本関節病学会 学術集会奨励賞 受賞報告 写真左;変形性膝関節症の関節
写真右;同じ方のレントゲン画像

骨棘(下段;緑の線で囲まれた部分)は変形性関節症の関節周囲に生じる余剰な骨組織です。膝関節における症状悪化と関連することが指摘されています。


 近年、体内の糖とタンパク質が反応して生じる『終末糖化産物(Advanced Glycation Endproducts: AGEs)』と呼ばれる物質と変形性関節症の関連が注目されています。AGEsは健康なヒトの体内でも産生されていますが、加齢や高血糖、腎機能低下により多く産生され、体内にとって有害な酸化ストレスを生じます。そのため、老化を促進する物質や糖尿病の3大合併症である腎症や網膜症、神経症と強い関連を持つ物質として研究が進んできました。岩木健康増進プロジェクトの参加者された方々の採血で測定したAGEsの値と超音波で計測した骨棘の大きさに有意な関連を認め、この結果をまとめて学会で報告させて頂きました。今後、血糖値やAGEs自体のコントロールを行うことが関節の老化を予防し、治療に結びつく可能性があります。


第42回 日本関節病学会 学術集会奨励賞 受賞報告 体内の糖とタンパク質が複雑な反応を経由して形成される終末糖化産物は関節内で酸化ストレスを誘導し、骨棘の形成に影響することが分かりました。終末糖化産物の蓄積は関節の老化を早める恐れがあります。


 今回の受賞は研究の指導や調査の御協力を頂いた石橋教授を中心とする整形外科学講座のスタッフの皆様、岩木健康増進プロジェクトのコアリーダーである中路教授や高橋准教授を中心とした社会医学講座のスタッフの皆様、そして岩木地区の住民の皆様の惜しみない御協力の結集であります。この場を借りて深謝致します。また、医学科4年生の高島佑典君と野口裕司君が研究室研究として疫学調査に関するデータ解析の方法を学び、本研究の調査活動に協力してくれました。彼らの奮闘にも深謝致します。
 弘前大学の理念は『世界に発信し、地域と共に創造する』です。お世話になった青森から世界に向けた情報を発信し、変形性関節症に苦しむより多くの方が笑顔になる日が来ることを目標に、我々研究班は研鑽を積んで参りたいと思います。


第42回 日本関節病学会 学術集会奨励賞 受賞報告 第42回 日本関節病学会 学術集会奨励賞 受賞報告
佐々木英嗣(年間最優秀論文賞)と千葉大輔が日本関節病学会でW受賞です!
今後も弘前大学変形性関節症研究班は世界に向けて情報を発信します!


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