お知らせ

German-Japanese Society Traveling Fellowship 2017 報告記

青森労災病院 前田周吾

【はじめに】この度German-Japanese Society traveling fellowshipとして2017年10月25日から11月19日までドイツにて日独整形災害外科学会と病院見学に参加してきましたので報告致します。German-Japanese Societyの歴史は古く、今年で40周年となります。フェローシッププログラムは1997年から始まり、2009年までの10年間で合計21人の若手ドクターがドイツの各施設を訪問しました。残念ながら一時中止となりましたが、2016年にプログラムが再開され、今年は自分を含めて4名でドイツの3施設を訪問しました。Spine groupとOrthpaedic groupそれぞれ2名ずつで構成され、Spine groupは筑波大学の船山徹先生、大阪医科大学の羽山祥生先生、Orthopaedic groupとして久留米大学医療センターの石橋千直先生と自分でした。フェローシッププログラムでは同じ施設を2つのグループに分かれて訪問していきました。
【第19回日独整形災害外科学会】10月25日に羽田より出発し、ミュンヘンを経由して学会開催地のベルリンに入りました。今回の学会には日本からトラベリングフェローの先生を含めて9施設13名の先生が参加しました。学会前日にはドイツ料理が楽しめる店で日独の先生方が集まるwelcome dinnerが開催されました。そして10月27日、Messe Berlinにて第19回日独整形災害外科学会が開催されました。ドイツ整形外科学会の開催最終日に会場内の小さな一室での学会でしたがknee & hipセッション、spine & rehabilitationセッションの2つのセッション、12演題についてフランクに意見交換を行いました。自分は「Accuracy of tibial tunnel placement during double-bundle anterior cruciate ligament reconstruction using the PL divergence guide」というタイトルでACL再建での後外側線維束-脛骨骨孔を作製する際に使用するPLダイバージェンスガイドⓇ(Arthrex社)の正確性評価の発表を行いました。夜は観光名所でもある連邦議会議事堂内のレストランでOfficial dinnerがあり、歴史的な建造物とワイン・料理を堪能しました。ドイツといえば多くの日本人サッカー選手が所属しているブンデスリーガが有名であり、原口元気選手が所属しているヘルタ・ベルリン対酒井高徳選手、伊藤達哉選手が所属しているハンブルガーSVとの試合がありました。折角の機会なのでフェローと学会に参加した先生とともにサッカー観戦に行き、人生初のサッカー観戦を楽しみました。
【Rostock大学訪問】
 最初の訪問施設はRostock大学でした。ロストックはベルリンから230km程北にある人口20万人の港湾都市です。Rostock大学ではMittelmeier教授(人工関節)とTischer教授(スポーツ整形・関節鏡手術)、Ellenrieder准教授(人工関節)の手術を見学しました。朝7:20のミーティングから参加し、8:00には手術室という流れでした。ドイツでは我々も手洗いして手術に参加することが可能で、実際にTKA術後感染のrevisionに手洗いをして参加しました。患者の体重は209kgとのことで日本では決してみることがないような太い脚と初めてのヒンジ型TKAの手術を経験できました。ドイツでは手術室とは別に麻酔をかける部屋があり、手術室に入るときにはすでに麻酔がかかっている状態です。そのため手術終了前には次の麻酔導入の指示が出されており、スムーズな手術入れ替えが行われていました。Tischer教授の外来を見学する機会もありました。患者は3部屋に分かれて入室し、若手医師が問診や診察を行った後に教授が入って診察し治療方針を決めるようにしていました。最終日にはラボ見学も企画していただき、インプラントのサーフェースに関する実験、biology、biomechanicsなど多くの研究が行われていました。
【St. Josef Srift病院訪問(ゼンデンホルスト)】
 2つめの訪問施設はゼンデンホルストにあるSt. Josef Stift病院です。ゼンデンホルストはドイツの北西に位置している人口1万3千人程度の小さな町で、海外旅行必携の本「地球の歩き方」には掲載されていない小さなまちです。訪問したSt. Josef Stift病院はドイツでも数少ないリウマチセンターの1つで全国各地よりリウマチ関連疾患の患者が来院していました。Orthopaedic groupはリウマチ整形外科のトップであるBause先生と下肢関節手術を中心に行っているPlatte先生の手術見学を行いました。病院には日本でもあるような外来、リハ室、病棟に加えて、装具作製室、小児病棟、リハ病棟、敷地の中心には公園もありました。病院を訪問した時に印象的であったことは入院している子ども達が関節にかかる負荷を軽減させるために院内を自転車で移動していたことでした。やはり手術はRA患者の手術が多く、RA患者の大きな骨盤欠損に対して術前CTモデルから作製したpatient matched implant(臼蓋カップ)を用いたTHAが行われていました。RA患者の大腿骨骨欠損を伴う高度外反膝に対するTKAでは側方動揺性が著明であり、術中にヒンジ型TKAに機種を変更して対応していました。看護師も十分にトレーニングされており、急な器械変更に対しても柔軟に対応し、スムーズに手術が行われていたのが印象的でした。
【Katholische Klinikum Brüderhaus病院訪問(コブレンツ)】
 最後の施設はコブレンツにあるKatholische Klinikum Brüderhaus病院です。コブレンツは人口約11万人で、ライン川とモーゼル川が合流するヨーロッパ水上交通の要衝です。ゼンデンホルストから約250km南に位置しています。ここの病院ではSpineのKilian先生、人工関節のHaunschild先生、スポーツ整形のHolsten先生の3名をトップとして手術が流れるように行われていました。我々と同じように朝に写真見せがあり(参加した日は7:15開始)、前日の手術、外来受診患者の写真があっという間に流れていきました。他の施設と同じように8時入室で手術が行われていました。この病院では1つの手術室に3つの手術台が並んでおり、整形外科手術が1つの部屋で3件同時に行われていました。部屋の中には手術で使用する器械、備品などすべてが揃っており、今までの病院と同様に別室で麻酔導入・体位変換・予備消毒などすべてが行われた状態で入室してくるためスムーズな入れ替えが行われていました。Orthopaedic groupはHaunschild先生の手術を中心に手洗い・見学を行い、実際にprimary TKAの手術に入りました。他の病院でもTKAの際にはターニケットを使わずに行っていましたがここの病院でも同様であり、ドイツでは多くの先生がターニケットペインを理由に必要最小限にターニケットを使うようです。この施設ではインプラント設置の時のみ使用していました。TKAの術後疼痛対策として関節内に麻酔薬を持続注入していました。そのため患者は痛みも少なく手術当日の夕方には立位も可能で数日で退院とのことでした。
【最後に】トラベリングフェローの最後には今回のスポンサー企業Aesculapの本社でreview meetingを行いました。参加した4名の先生とAesculapのトラベリングフェロー担当者で各施設の研修内容など来年以降のトラベリングフェローについて意見交換を行いました。今回の3施設はすべての病院で手術に参加しながら先生方と意見交換を行うことができ(3施設で10件以上の手術に手洗いしました)、また食事会では各施設のtopの先生だけではなく若手の先生と話をする機会もありました。このような病院・手術見学、食事会を通して日本とドイツ医療の違い、現在の日本の立ち位置というものを客観的に認識することができたのは大きな収穫です。このような機会を下さいました日独整形災害外科学会の志波教授、Scholz教授をはじめ幹事の先生方、事務局の方々、スポンサー企業のAesculapと参加を快諾していただきました石橋教授、青森労災病院の油川先生、不在中に病院のサポートをしていただいた教室員の先生方に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を今後の診療・研究に行かせるよう益々努力していきたいと思います。

第19回日独整形災害外科学会終了後      Mittelmeier教授と手術の合間にディスカッション
                      (ロストック)


Bause先生との食事会(ゼンデンホルスト)    Haunschild先生との食事会(コブレンツ)


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