診療案内:手外科・外傷再建グループ
手外科・外傷再建グループは2023年10月より手外科と外傷再建グループが合併し藤田有紀、小野浩弥、古川正和の3名を中心に治療にあたっております。
外来では手足の先天異常や上肢の神経障害、腱鞘炎や変形性関節症、手の外傷などを扱っています。手は「運動」「感覚」「コミュニケーション」にとって必要であり、手術だけでなくリハビリテーションを含めた保存治療を含め、整容面・機能の改善を目指して治療を行っております。
また通常の骨折から重度四肢外傷および骨盤・脊椎外傷に対する治療を中心に行っています。
3次救急病院である当院へ搬送された患者様や一般病院で対応困難な難治症例に対し、迅速に対応できる環境を作り、診療にあたっています。けがをした患者様ができる限り元の機能を取り戻せるように治療を行っております。
専門外来は、毎週月曜日午前・火曜日午後に行っております。術後患者様を長期にわたりフォローしております。
手足の先天異常
生まれつき手足に異常を認めることがあります。年齢や疾患に応じて、ギプス治療や骨切り術、骨延長術などの手術を行っています。また長期にわたり外来でも経過をみています。
- 母指多指症
- 多合指(趾)症
- 先天性橈尺骨癒合症
- 絞扼輪症候群
- 先天性下腿偽関節
- 軟骨無形成症
- 内反足 など
母指多指症
症状:うまれつき母指が2つあります。形は様々ですが、通常外側のほうが小さく、指の動きも大きいほうがよく動きます。
原因・病態:手の先天異常の中で最も多いです。原因は明らかではありませんが、胎生期に手の部分的な障害によって母指の重複が生じるとされています。ほかの先天異常を合併することがあります。
治療:1歳前後での手術を行う場合が多く、できるだけ正常に近い母指にします。
上記疾患などに伴う下肢長差や変形などに対する骨延長術・成長抑制術
疾患や成長段階に応じて、創外固定を用いた脚延長術や、骨端成長抑制による変形矯正、脚長補正手術を行っています。
上肢の神経障害
末梢神経が開放創や挫傷(ケガ)、骨折などの外傷、絞扼性神経障害、腫瘍・腫瘤、神経炎などにより障害されて生じます。神経の傷害がどこで生じているかによって症状が異なりますが、筋力の低下や感覚障害、しびれを呈します。骨折や脱臼などの外傷や腫瘍によるものは早期に手術が必要です。原因が明らかでないものや回復の可能性のあるものは保存的治療が行われ、回復しないものや麻痺が進行するものでは手術が必要になります。
- 胸郭出口症候群
- 正中神経麻痺:手根管症候群、前骨間神経麻痺
- 尺骨神経麻痺:肘部管症候群、ギヨン管症候群
- 橈骨神経麻痺:後骨間神経麻痺
腱鞘炎・変形性関節症など
加齢や手の使いすぎなどにより生じることがあります。痛みや手の使いにくさが強く保存治療が無効な場合、手術をすることがあります。
- ばね指
- ドゥケルバン腱鞘炎
- へバーデン結節
- 母指CM関節症
- 変形性手関節症
- 変形性肘関節症 など
母指CM関節症
症状:物をつまむときや瓶の蓋を開けるときなど、母指に力が入るような動作で母指の付け根に痛みがでます。進行すると母指が開きにくくなり、外見で変形がわかるようになります。
原因・病態:使いすぎや加齢、ケガのあとにも起こることがあります。関節軟骨がすり減り、進行すると関節は亜脱臼してきます。
治療:保存治療(投薬、装具、注射など)が有効ですが、保存治療でよくならない場合には手術(関節形成術や関節固定術)を行うことがあります。
外傷
ケガで損傷してしまったものをできるだけ元の状態に修復し、機能障害を残さないようにします。
- 骨折:橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折、ほか開放骨折など
- 四肢・指切断
- 神経断裂
- 腱断裂
- 血管損傷
- 偽関節・感染など難治症例
舟状骨骨折
症状:けがの直後では手首の母指側に痛みと腫れを生じます。時間とともに軽快しますが、放置していると骨折部が癒合せず偽関節(骨折した骨が癒合せず関節のように動くこと)となります。手首の痛みや動きに制限が生じます。
原因:多くの場合、転倒や交通事故などで手首を背屈して手をついたときに生じます。この骨折は骨折と思わず放置して偽関節になることが少なくありません。
治療:保存治療では非常に治りにくい骨折です。受傷早期でずれがない場合ギプスによる保存治療を行うことがありますが、多くはネジで固定する手術を行います。偽関節となった場合、骨移植などより複雑な手術が必要になります。
指の切断
指の完全切断は、指の再接着という手術を行い、骨、腱、神経、動脈、静脈をそれぞれ接合します。神経や血管は顕微鏡下に縫合を行っています。また再接着ができなかった症例では足趾移植(足のゆびを手のゆびに移植)を行っています。
【四肢外傷】
当院は3次救急病院のため、四肢の切断や開放骨折などの重度四肢外傷症例が搬送されてきます。これらの重症例に対しては、超急性期から整形外科が介入し、適切な治療を開始するようにしております。軟部組織の損傷が高度な症例に対しては、皮弁や筋弁を組織欠損部に移植し、マイクロサージャリーによる神経・血管吻合などを行い、組織再建術を行っております。
- 重度四肢外傷に対する骨接合術
- 軟部組織欠損に対する広背筋皮弁
【脊椎外傷】
上位頚椎から骨盤骨折までの全脊椎を低侵襲で手術治療を行っております。多発外傷に伴う脊椎骨折おいては、Damage Control Orthopedicsの概念で、経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いたMISt (Minimally Invasive spine Stabilization)を積極的に取り入れ、早期離床を目指しております。また、待機手術における難治症例には術中CT (O-arm® Medtronic社)を用いて、除圧固定術を行っております。
- PPSによるMISt
- O-armを用いた脊椎手術
手術実績
2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
骨接合 上肢 | 40 | 32 | 54 | 24 | 47 | 40 | 17 | 24 | 24 | 41 | 37 |
再接着 | 3 | 5 | 4 | 4 | 1 | 12 | 6 | 12 | 4 | 12 | 5 |
神経 | 11 | 29 | 26 | 26 | 25 | 25 | 19 | 25 | 26 | 27 | 17 |
筋、腱 | 17 | 17 | 18 | 15 | 22 | 21 | 22 | 17 | 21 | 27 | 11 |
皮弁植皮 | 17 | 17 | 31 | 28 | 16 | 10 | 11 | 9 | 7 | 16 | 10 |
先天性形成不全手・足手術 | 3 | 5 | 10 | 7 | 7 | 7 | 8 | 18 | 12 | 10 | 8 |
矯正骨切り 骨延長 | 4 | 3 | 3 | 3 | 1 | 1 | 2 | 0 | 0 | 11 | 8 |