留学寄稿
留学寄稿 外傷再建グループ 千葉 紀之
留学報告:会津中央病院 外傷再建センター
令和3年4月から令和4年3月までの1年間、会津中央病院外傷再建センターに国内留学をさせて頂きましたので、ご報告致します。
会津中央病院外傷再建センターでは所長の畑下智先生をトップとして、11年目の佐藤先生、6年目の川前先生、12年目で福島県立医科大学救急医療講座から研修に来ていた反町先生、そして私という計5名での診療体制でした。また、前所長である伊藤雅之特任教授が週1回来て下さっていました。
外傷再建センターの最大の特徴は一般整形外科と完全に分離されていることです(電話などでは「外再の〇〇です」と名乗ります)。外来は各人が週1日割り当てられ、自身が執刀した症例のフォローと他院からの紹介患者を診察し、肩痛・膝痛・腰痛などの診療は行いません。そして手術は毎日、朝一から行います。もちろん定時手術は前の週の内に申し込みますが、次々に増える外傷患者・臨時手術申込についても、麻酔科の先生、手術室スタッフがとても協力的であり、どうやったら必要な手術を適切な時期に行う事が出来るかを一緒に考え、柔軟に対応してくれます(長い手術の臨時申し込みでよく言われる「こんな長い臨時を申し込むなら定時の手術を中止しろ」というような事は言われたことがありません)。しかし外傷再建センター開設当初から協力的だったわけではなかったと畑下智先生が仰っていました、やはり実績を積み上げることで周りからの信頼を獲得し今のような体制を作り上げたのだなと思いました。
外来や待機で自分が担当した症例はそのまま自分が執刀医となります。畑下智先生は手外科を、伊藤雅之先生は骨盤・関節を専門としており、お二人の指導の下で手術を行います。自分がこれまで経験した事がなかった手術でも基本的には全て自分が執刀医となり、そのためには事前にしっかりと術前計画をたてて、毎日7:30からのカンファレンスでその日の手術症例についてプレゼンを行います。どうやって展開するのか、どの骨片から・どんな順番で・何を指標にして整復していくのか、仮固定はどうするのか、インプラントの選択理由、どこからscrewを入れていくのか、など自身の計画をしっかりと提示し、またそれに対して皆で綿密にディスカッションをした上で手術を行います。特に整復について、どの骨片から・どんな順番で・何を指標にして整復していくのか、という点を漠然とではなくしっかりとした計画として提示するという事は、骨折の手術をする上でとても大事であると感じました。これまでの自分は事前に考えているつもりでも、なんとなく漠然としたイメージでしかなく、ここまで明確に言語化してそれをディスカッションするというのは初めての経験でした。しかし、このように詳細に計画し、ディスカッションをして、執刀医だけでなく助手も共通のイメージを持ってから手術を行うのでスムーズに進行します。もちろん術中に上手くいかない場面も出てきますがその時も、それならばどうするべきか、他にはどんな方法があるかという解決策も浮かびます、そして上手くいかなかった原因はなにかを反省し今後はどうすべきかという改善点がみつかります。こうして文章にすると、手術を執刀する上では当たり前の事でしかありませんが、特に骨折の手術において、いま挙げたような詳細な術前計画を持って手術に臨んでいる、と自信を持って言える人は少ないのではないでしょうか。これから大学病院でのカンファレンスにおいても、詳細な手術計画とそれについて各専門グループの先生方はもちろんですが、大学院生やローテーターの先生方も含めて、全員でディスカッションを行い皆のコンセンサスを得られた上で治療を行いたいと思っています。
昨年度は重症症例が非常に多く、自身でも遊離皮弁1例、有茎皮弁5例、Gustilo IIIc血行再建1例、多数指切断3例、指切断(不全含む)6例、その他にも多発外傷を含む多数の症例を経験し、非常に有意義な研修をすることができました。会津中央病院外傷再建センターでの経験を活かし、今後の弘前大学そして青森県の外傷診療に少しでも貢献出来るように頑張りたいと思っています。
最後に、1年間という長期間の国内留学に送り出して頂きました石橋恭之教授、浅利享医局長、弘前大学整形外科教室の皆様に深く感謝致します。
畑下智先生(左)と筆者(右) |
伊藤雅之先生(下段左)、畑下智先生(上段左) |
研究・実績
- 研究内容
- →脊椎・脊髄外科グループ
- →スポーツ整形外科グループ
- →関節グループ
- →手外科・外傷再建グループ
- →骨・軟部腫瘍グループ
- →業績集
- →書籍集
- →受賞・表彰
- →留学寄稿